ILC 設計から実現へ

ILC通信 74号pdf

ILC の完成予想図 ©Rey.Hori

  2013 年6 月に「技術設計報告書」が出版され、国際リニアコライダー(ILC)計画はその実現に向けたフェーズへと移行した。技術設計報告書の発行をもって、それまでILC 加速器の設計 を進めて来た国際組織「国際共同設計チーム(Global DesignEffort : GDE)」はその任務を終え活動を終了。建設実現に向けた活動を行う新組織「リニアコライダー・コラボレーション(LCC)」に引き継がれた。現在、より詳細な加速器の設計やコスト見積もりの精査が進んでいる。

 2013 年8 月には、国内研究者によって岩手県と宮城県をまたぐ北上山地が建設適地と評価され、日本におけるILC 実現に世界の研究者から期待が高まっている。欧州では、2013 年5 月、最新の欧州全体の素粒子物理学の推進計画(欧州戦略)が欧州合同原子核研究機関(CERN)理事会からの承認を受けた。ここには、ILC の日本における取組みへの歓迎の意と、欧州研究者の参加の意思が示されている。

 米国では、エネルギー省の諮問機関「P5 部会」が素粒子物理学プロジェクトの優先順位付けを5 月までにまとめる予定だ。このP5 部会に情報提供を行う、米国物理学協会の素粒子物理学部門の会議(通称「スノーマス会議」)でも、欧州戦略同様に、日本におけるILC の取組みについてポジティブなメッセージが発信されている。今年1 月には、リニアコライダー国際研究所建設推進議員連盟(河村建夫会長)から、小坂憲次議連副会長の訪米の際に大統領府等へレターが手交され、ILC における国際協力の重要性を共有した。下村博文文部科学大臣が訪米時に、モーニッツ米エネルギー省長官とILC について議論したことが文科大臣のフェイスブックページに掲載されており、各方面でのハイレベルの議論が始まっている。

 今年2 月には、世界の加速器研究所の長で構成される組織「将来加速器国際委員会(ICFA)」が、「国際研究コミュニティによる日本におけるILC 実現にむけた取組みが素晴らしい進捗を遂げていることを歓迎する。ICFA はILC 建設のための世界の技術能力の評価を行う」との声明を発表した。これに伴い、ICFA のもとには、新たにILC の国際研究所の組織や運営等について検討する委員会が設置されている。

 アジアでもILC に関する動きが活発化している。インドは、エネルギー利用を視野に入れたILC 技術協力に高い関心があり、ILC 計画への参加を強く希望している。中国の科学者は、ILC 建設費の5%の拠出が出来るよう、政府に要請することを表明している。

 5 月8 日、ILC を日本に誘致した場合の課題などについて検討する有識者会議が初会合を開いた。この有識者会議は、文部科学省内のILC タスクフォ―スの下に設置されたもので、来年度を 目処に報告書がまとめられる予定だ。

 設計から実現へ、ILC 計画は着実に歩を進めている。












加速器図鑑
四極磁石

 ビームを収束させる装置が四極磁石です。ビームが走る時に広がって 飛び散ってしまわないように、四極磁石は加速器の中で数多く使われて います。またILC では最後にビームをギュッと絞って6 ナノメートル*1 の大きさにする長さ2.2km の最終収束システムの中にも多くの四極磁石 が使われています。ILC では合計3500 台もの四極磁石が使われます。

 上の写真が四極磁石です。丸く出っ張った部分が中心に向かって4つ 飛び出しているのが「極」です。地球は北極にS 極と南極にN 極を持つ 二極磁石であることはよく知られています。子供の頃に遊んだ棒磁石や U字磁石もN 極とS 極を持つ二極磁石です。写真の磁石は、N 極、S 極、 N 極、S 極、と4つの極を持っているので四極磁石と呼ばれます。

 ビームはこの四極磁石の4つの極のちょうど真ん中を通ります。電子 ビームが紙面の裏から表に通るとしましょう。ビームにはある程度の太 さがありますから、ちょうど真ん中を通る電子もあれば、やや右側通る 電子、やや左側を通る電子など、ビームの中の個々の電子はいろいろな ところを通ります。電子の動きはつまり電流です。電流は磁場から力を 受けます。ここで注目して欲しいのは右側では上がN 極で下がS 極、左 側では上がS 極で下がN 極、と磁場の向きが左右で逆になっている事で す。右側を通る電子は磁場から力を受けて左側に曲がります*2。反対に 左側を通る電子は磁場から力を受けて右側に曲がります。ちょうど真ん 中では左右の磁場が打ち消し合って、磁場はありません。だからちょう ど真ん中を通る電子は力を受けません。(イラスト参照)このようにして 広がった電子ビームが「収束」の力を受けます。

 ところでビームは左右だけでなく上下にも広がっています。同じよう に電子に働く力を考察すると上側を通る電子は上向きに、下側を通る電 子は下向きに力を受ける事がわかります。つまりこの四極磁石は上下方 向にはビームを「発散」させる力をもちます。これは困ったことです。 実際の加速器ではもう一つの四極磁石を下流におきます。この四極磁石 の極のN/S は左右方向は「発散」、上下方向は「収束」になるようにし ます。このように組み合わせて全体として左右方向にも上下方向にも「収 束」する力を生み出します。

*1) 1 ナノメートルは 100 万分の1 ミリメートル。
*2) もしよければ中学で学んだフレミングの左手の法則を思い出して曲がる 向きを確かめてみて下さい。電子は負の電荷を持っているので電子の走 る向きと電流の向きは逆である事に注意してください。


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KEK 一般公開

 2014 年の一般公開は9 月13 日(土)に開催します。詳細については、 決まり次第、KEK 一般公開ウェブページ(http://www.kek.jp/ja/ PublicRelations/Events/Openhouse/)に掲載されます。



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「ILC かるた」プロジェクト開始。読み札募集します!

ILC 通信編集部では、遊びながら、ILC を楽しく知って頂くために 「ILC かるた」を、皆さまとともに作り上げていく企画を開始します。 下記の要領で、読み句を募集いたします。多くの皆さまのご応募をお待 ちしております。

1. 読み句:

語調は自由。
ILC の特徴や、ILC への期待などを詠った句を20 字程度で作成して下さい。お一人何句でも可。ダジャレも大歓迎です。

2. 応募方法:

 Fax:029-879-6246(ILC かるた制作チーム)

 E-Mail:pr@lcdev.kek.jp(件名に「ILC かるた」とご記入下さい。)

 Twitter:ハッシュタグ「#ILC かるた」を付けてツイート

 Facebook:ILC 通信Facebook
       (https://www.facebook.com/ilctsushin)に投稿

3. 応募期限:

電子メール、Twitter、Facebook は2014 年9 月30 日(火)23 時まで。
Fax は同日17 時まで。

4. 選考:

ILC かるた選考委員会による厳正なる審査で選考します。選考結果 は2015 年1 月頃発表予定です。入選者には、賞状と副賞を贈呈いた します。

5. その他:

 選考後採用された読み札の著作権はILC 通信編集部に帰属します。



編集部より

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