ILC(国際リニアコライダー)について


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ILC(国際リニアコライダー)について

ILC in one minutes: ILCは次世代の電子・陽電子衝突加速器。

ILCの仕組みを約1分のアニメーションでご紹介します。
© 2010 ILC, all right reserved / rendered and authored by Rey. Hori

国際リニアコライダー(ILC:International Linear Collider)は、史上最大最高の次世代電子・陽電子衝突加速器。世界中の研究者が実現に向かって努力しています。完成の暁には、質量の起源を明らかにし、3次元を超える空間「余剰次元」を見つけ出し、さらには、この世の4分の1を占める謎の物質「ダークマター」の正体を突き止めることも夢ではなくなります。ILCはこれまでの宇宙像を変革する底力を秘めた加速器なのです。

全長約30kmを超える地下の直線トンネル内に、超精密な高真空ビームパイプのシステムをつくります。そして、ビームパイプの一方の端から電子を、もう一方から陽電子のビームを入射して光の速度にまで加速。中央部で正面衝突させ、ビッグバンとほぼ同じ高エネルギー状態をつくりだします。その瞬間に発生する素粒子を測定・解析することで、宇宙の起源解明への扉を大きく開くことができきるのです。

この次世代加速器の実現を目指して、教授から大学院生まで、1000人以上の世界の研究者が取り組んでいます。


ILCのしくみ

ILCの構成図  (クリックすると拡大図がご覧になれます)

電子 (Electrons)

ILCで加速される電子は、強力なレーザーを金属の標的に当てることでたたき出されます。そのレーザーは、2ナノ秒の間、瞬間的に 繰り返し照射されます。1回の照射で取り出される電子は数億個。それらの電子は電磁場によって「バンチ」と呼ばれるかたまりにされ、250メートルの前段加速器を通過する間に5ギガ電子ボルトのエネルギーにまで加速されます。

陽電子 (Positrons)

陽電子は電子の反物質。地球上では自然に存在しないので、人為的につくらなければなりません。まず、「 アンジュレータ」と呼ばれる磁石の中に、主線形加速器からの電子ビームを通します。すると、電子ビームの軌道が上下左右にローラーコースターのように蛇行します。このときに放射される高エネルギーX 線をチタン合金の標的に当てると、電子と陽電子が生まれます。この陽電子を集め、250メートルの前段加速器を通して5ギガ電子ボルトまで加速します。一方、アンジュレータを通りすぎた電子ビームは引き続き、主線形加速器によって加速されます。

粒子測定器(Detectors

電子と陽電子のバンチは、ほぼ光速でたがいに衝突します。そのときの衝突エネルギーは最大500ギガ電子ボルト。そこで繰り広げられる壮大な衝突を記録するため、2台の粒子測定器が設置されます。これらの粒子測定器は、巨大なデジタルカメラといえます。このカメラを使って、電子と陽電子から生まれる素粒子のスナップショットを撮影するのです。新たに創りだされる素粒子の貴重な情報をもれなく取り込むため、2台の最先端測定器は相 補的な機能を備えています。2つの測定データをつきあわせて、新しい物理現象の証拠を確かなものにするのです。

主線形加速器(Main Linac

電子と陽電子は、それぞれ全長12キロメートルの2台の線形加速器で加速され、衝突点に向かいます。線形加速器の本体は、数珠つなぎに連なる多数の超伝導加速空洞です。この加速空洞は冷却容器の中に設置されています。この冷却容器はクライオモジュールと呼ばれ、液体ヘリウムによって運転時には-271℃( 絶対温度2度)まで冷やされ、超伝導状態となります。ここに、外部から電磁エネルギーを送り込んで、必要な加速電場を発生させるのです。最終的に250ギガ電子ボルトまで加速された電子と陽電子のビームは、およそ1000ジュールのエネルギー、平均電力に換算すると10メガワットの電力になります。電子と陽電子の生成から加速までの全過程は、1秒の間に5 回の割合でくりかえされます。

ダンピングリング(Damping Rings

電子源や陽電子源でつくられるバンチは、そのままでは粒子の密度が低く、多数の素粒子反応を効率よく起こすことができません。そこで、電子用と陽電子用にそれぞれ1台ずつ、周長6.7キロメートルのダンピングリングを導入します。ダンピングリングには「ウィグラー」という電磁石が何台も連なっています。ビームがウィグラーを通過すると、その軌道が左右に揺さぶられてX線を放射します。リングを周回することによってビームがウィグラーをくりかえし通過すると、バンチの粒子密度はしだいに小さくなり、長さは数ミリメートルに、幅は髪の毛よりも細くなります。ダンピングリングの通過時間はわずか0.2秒間。しかし、ビームはその間にリングを約1万周もするのです。

ビーム収束システム(Beam delivery system

ルミノシティを最大限まで上げるために、衝突点ではきわめて小さなサイズまで粒子ビームを絞り込みます。衝突点でのビームサイズは、厚さ数ナノメートル、幅数百ナノメートル。このサイズにビームの焦点を合わせる装置が「ビーム収束システム」です。2キロメートルの範囲に設置された電磁石群で構成されるビーム収束システムは、敏感な測定器に悪影響を与える、バンチの中心から大きくそれた粒子をとり除いたり、電子と陽電子のビームが最適に衝突するようにビーム軌道などの条件を微調整する機能も備えています



LHC と ILC

5TeVビームが初めて衝突した3月30日に4つのすべてのLHC実験で衝突イベントを観測した。(CERN)

2010年3月30日:現地時間13:06分、欧州原子核研究機構(CERN)の大型ハドロンコライダー(LHC)が重心系エネルギー7兆電子ボルトでのビーム衝突を達成。はじめてテラ・スケールに直接到達することに成功しました。

LHCは周長27キロメートルのトンネルに建設された円形加速器です。反対方向に回る2つの陽子ビームを加速し正面衝突させます。ただし、陽子はクォークやグルーオンといった素粒子から構成される複合粒子であるため、衝突によって生じる素粒子反応は非常に複雑で、その中から重要な反応を探し出すのは容易ではありません。

一方ILCは電子と陽電子を加速して衝突させる直線加速器です。電子も陽電子も素粒子なので、非常にクリアな素粒子反応を見ることができます。つまり、LHCが未知の領域を上空から俯瞰し、ILCが優れた精度でその俯瞰図にズームインするのです。LHCがどんな新しい眺望を見せてくれるのか。世界中の素粒子物理研究者が、新しい発見を心待ちにしています。



国際協力で進むILCの研究開発

ILCのS1グローバル実験で協力する米国、ドイツおよび日本の研究者 (KEK)

ILCを国際協力によって作ろうという合意が世界の多くの素粒子、加速器の研究者の間でなされています。この計画を進める為に国際共同設計チームが作られ、私たち日本の研究者も世界中の人々と密接に協力しながら研究を進めています。

素粒子物理学は私たちの好奇心を駆り立てます。ILCは優秀な人材を引きつけ、次世代の科学者やエンジニアを育てます。歴史が語っているように、基礎研究がもたらした知識は、世界の経済と文化を変容させてきました。ILCの技術も継承され、科学と産業の両方に多くの応用技術を生みだすことでしょう。

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