ILC通信 号外 pdf

東日本太平洋大地震のKEKへの影響および第58号延期のお知らせ



 3 月11 日金曜日に発生した、三陸沖を震源とするマグニチュード9.0 の非常に強い地震は、東北地方を中心に未曾有の被害をもたらしました。被災された方々に心からお見舞いを申し上げるとともに、一日でも早い復旧をお祈り申し上げます

 余震が続く中、いまだ多くの被災者の方が避難所生活を強いられています。しかし、多くの皆さんの懸命な努力で、鉄道の復帰や流通経路の確保、仮設住宅の建設開始など、少しずつ復興の兆しも見えつつあります。

 震災発生を受け、3 月15 日の発行を予定しておりましたILC通信58 号の発行を延期することに致しました。今号外では、高エネルギー加速器研究機構(KEK)のILC 関連研究施設への被害状況をお知らせ致します


ILC 関連施設への地震の被害状況

 KEK のある茨城県も大きな被害を受けましたが、KEK つくキャンパスは、幸いにも甚大な被害は免れることはできました。震災後、KEK は最大限の節電対応をとっているため、電力供給の状況を勘案しながら、部分的に通電の復旧をはかっています。

 加速器のトンネルや建物が停電していたため、研究者が懐中電灯を手に被害状況の一次確認を行いました。KEK のリニアコライダー計画推進室長の山口誠哉氏は確認結果について「特にATF(先端加速器試験装置)は大きな被害を受けました。復帰にはかなりの時間がかかるのではないかと思いますATF の動力ケーブルの再敷設と健全性確認、リニアックのビームライン復帰とアライメント(各部の位置調整)には相当時間がかかりそうです」と語っています。

 震災直後に行われたのは、目視で判断できる被害の調査でした。全体的に南北方向への強い揺れを受けた形跡が確認されました。ATF の線形加速器部分では、最下流の四極磁石の架台一台が南北方向にずれたため、その結果としてビームパイプが損傷していました。

 放射線を遮蔽するコンクリートブロックは、数カ所にわたって、数センチメートル程度、最大で5センチメートルのずれが確認されています。

 ダンピングリング部分は、目視では外観上の大きな損傷はありませんでした。しかし、ベローズとよばれる蛇腹状の接続部分を見ると、かなり大きな振動を受けた形跡が認められました。今後、リング内部の損傷について、詳細な調査が必要となります。

 超伝導RF 試験施設(STF)は、地上、地下の両施設ともに目視上は、ほぼ被害が無かったと報告されています。

 電気の復旧に伴い、KEK の全施設の詳細な確認作業が行われる予定となっています。

 国際共同設計チームプロジェクトマネジャーの山本明氏は「国内外から多くの激励のメールを頂いており、非常に感謝しています。ILC にとって非常に困難な状況ですが、皆さまのお言葉を、この状況を乗り越えるための力にして、今後の前進に向けていかなる可能性があるか模索して行きたいと考えています」と述べ、計画推進への決意を語りました。

ILC 通信編集部より

 茨城県東海村のJ-PARC(大強度陽子加速器施設)では、津波は免れたものの、甚大な被害が観測されています。つくば地区の加速器とともに、修理、再稼働には時間もコストも必要となるでしょう。また、加速器の運転には多くの電力を必要とするため、運転開始には電力事情の好転を待つ必要もあります。ILC 通信では、平成23 年度より、リニアコライダー関連施設の復旧に資金を集中するために、隔月発行に変更することに致しました。引続き皆さまからご理解、ご支援頂けますよう、情報発信に努めていく所存です。

 テレビ等で拝見していると、東北の方の我慢強さや人を思いやる心が伝わって来ます。被災地では暴動も起きず、被災した方が助け合い、お互いを思い合う姿が世界中で賞賛されています。日本に生まれて良かった、と心から感じている人も多いはずです。

 KEKもこれから、復旧に向けて本格的に動き出さなければなりません。被災地の方の苦労とは比較しようがありませんが、全力を挙げて努力して行きます。今後ともご愛読頂けますよう、よろしくお願い申し上げます。

2011 年3 月25 日