ILC通信 Vol.66pdf

「ILC でグローバル都市のモデルを」日本創成会議が提言

記者会見で提言を発表する日本創成会議 座長 増田寛也氏 画像提供:日本創成会議

 7 月12 日(金)、「日本創成会議」が第2 回提言を発表した。日本創成会議は、政策、経済、産業界労使や学識者など、各界の有識者で構成される組織。日本創成会議は、10 年後の日本全体のグランドデザインを描き、その実現に向けた戦略を策定すべく、国民の立場から提言を発信し「新しい日本」を創るための国民的議論を興すことを目的としている。座長を務めるのは、元総務大臣の増田寛也氏である。

今回の提言の柱は、次の2 本だ。

提言1 日本は、地方都市をグローバル都市に変革し、東京以外にも世界から人材・資本を集めることができる都市をつくり、地域主導で成長する国づくりを目指すべきである。
提言2 日本が有力候補である国際プロジェクトILC(国際リニアコライダー)の国際機関としての実現を通し、地方都市の改革に取り組み、グローバル都市創成のモデルを構築すべきである。

 現在、少子高齢化などにより、日本社会にはびこる閉塞感を打破するためのキーワードとして挙げられているのが「内なるグローバル化」だ。これは、日本を立て直すために、グローバルな視点を持って、地方の立て直しを図るべき、とする考え。日本に ILC が建設されるとすると、その立地は地方都市になる可能性が濃厚だ。そこには「グローバル都市」が誕生する。「日本政府、地方自治体ともに、将来展望が描けずに悩んでいる。ILC の誘致を契機として再生の道を企図すべきでしょう」と増田氏は語る。

 今回の提言を出す時に最も着目したのは、ILC が出来ると、世界の最先端の研究をしている知的水準の高い人々が、そのそばに住んで研究する、ということだと増田氏は語る。「こんなチャンスは2 度とないでしょう。ILC が日本に誘致できれば、それを契機にグローバル都市の形成が可能になる。ぜひ誘致をすすめたいと考えています」。

 増田氏は提言の発表後、各界から前向きな反応を受け取ったという。「経済界のトップも含め、政官界、地方自治体などから反応、問い合わせがありました。次の国家戦略の柱とし取り入れるべきだという声もありました」。このポジティブな反応につながった要因のひとつが、提言発表の一週間前に大きな話題となった、欧州合同原子核研究機関(CERN)が発表した、ヒッグス粒子と見られる新粒子の発見だった。CERN の発表があったことで、加速器が何か、ヒッグス粒子の発見にどのような意味があるのか、については説明不要だったのだ。「現在稼働中の大型ハドロンコライダー(LHC)の後継となる加速器の意義や必要性が受入れられやすい土壌となったのです」。しかし増田氏は、これを「ラッキーなこと」だという。ILC の知名度は、まだまだ低いからだ。増田氏は「広く一般からの理解を得るためには、まだまだ努力の余地があります。ILC で何を究めようとしているのか、それだけのお金をかける必要があるのか。世界全体でどんな研究を進めようとしているのか、ILC が人類にどのように貢献できるのかを、科学者が世界に示して欲しいです」と、研究者による解りやすいILC の説明と広報活動に期待を寄せる。

 「日本創成会議では、この提言を柱にILC 計画を後押しする大きな流れを作ることを狙って、活動を強めていきたいと思います」。日本の有識者からの強力なバックアップを受け、プロジェクトはまだ一歩前進したと言えよう。


ILC NewsLine ダイジェスト

ILC 研究者グループが毎週発行しているニュースレター「ILCNewsLine」に掲載された記事から、ILC 通信編集部セレクトのおすすめ記事を要約版でお届けします。元記事は、ウェブサイトでご覧頂 けます。(英語:http://newsline.linearcollider.org/ 日本語訳:http://ilchighlights.typepad.com/japan/

9月20日号より 一丸となってマイルストーンの達成をめざす
山田 作衛 ILCリサーチ・ディレクター

 現在、私たちは詳細ベースライン設計報告書(DBD)の完成に向け、ラストスパート中である。2 巻のDBD のうち、ILC の物理の可能性を説明している物理学編は、マイケル・ぺスキン氏が召集した著者グループが7月にドラフトを完成させ、現在は、研究者グループに公開され、コメントを募集している。

 測定器とシミュレーションに関するもう一方の巻の原稿は、今週完成し、国際測定器諮問委員会(IDAG)のレビューを受けるために、提出される予定だ。 10 月に米国アーリントンで開催される国際会議LCWS12 会期中に、 IDAG はマネジメントと協議を行い、章毎に各測定器グループと面談を行う。これら 2 巻は、参考資料も含め、測定器趣意書によって始まった期間中に ILC 測定器と物理学研究者グループが行った開発研究の全ての成果をまとめるものである。この報告書によって、この夏にLHC で発見されたヒッグスらしき素粒子によって注目される新たな領域を、ILC 実験で精細に調べることができることを、専門的な読者に納得してもらえるものになると期待している。



8 月 16 日号 
ILC 技術設計報告書作成の戦略
バリー・バリッシュGDE ディレクター

メルボルンの会議に参加したGDE 役員会のメ ンバー

 国際共同設計チーム(GDE)役員会は、2012 年高エネルギー物理学国際会議の直後に豪州メルボルンで2 日間の会議を行った。主な議題は、ILC 技術設計報告書の作成にあたっての、詳細な「戦略」を発展させることだった。
 GDE は、将来加速器国際委員会(ICFA)とその小委員会であるILC 運営委員会(ILCSC)によりつくられたもので、超伝導高周波(RF)技術をベースとした0.5 ~ 1 テラ電子ボルトの線形電子‐陽電子コライダーの世界的なR&D と設計活動についての調整を全世界的に行う。これは、LHC の仲間の加速器として、従来の常温技術よりはむしろ、超伝導RF 技術を設計のベースにおくというICFA による決定に従ったものだ。この仕事の柱は、重要な技術がILC 性能条件を満たすことを実証し、そのような世界的な加速器を実現する現実的な設計を導いたR&D プログラムである。GDE の最終的な提出物は、R&D の成果をまとめ、ILC のために提案された設計を示す技術設計報告書(TDR)だ。


8 月 16 日号 
炸裂する物理学

『電子』を加速する- DESY の最新の加速器の ショーは、
空洞がどのように電子を加速するかの説 明に
聴衆全体を巻き込む。画像:DESY、ライス・ ベルグ氏

 学童でいっぱいのホールを想像してみて下さい。入った時には、彼らは超伝導高周波加速器について何も知らない(当然ですよね)。出て行く時には、彼らは加速の事実をいっぱい身につけ、ホールの端から端まで「電子」を加速する高周波の一部にもなっていた。どうやって?それは、今年ドイツで始まった加速器についての全く新しいステージ・ショーのおかげだ。「レーシングマシン(Rennmaschinen)」と呼ばれるもので、12 歳以上の児童を対象としている。作者は、元粒子スラム※の仲間とILC のベテラン、ブライアン・フォスター氏とマーク・ウェンスカット氏だ。これは、世界初の加速器ショーではない。これはフォスター氏がオックスフォード大学の学生であったスージー・シー氏(現ハンブルグ大教授)と共同で開発した「加速する!」をベースとしたものだ。
 「新しく別の物理学ショーを作ることより、粒子加速に本当に集中したかったのです」と、ウェンスカット氏は語る。「それで、私たちはオックスフォードのショーから最高のアイデアを引き継いで、私たちのものもいくつか盛りこんで、スクリプトを書いて、チームをまとめました」チームの現メンバーは、ドイツ電子シンクロトロン研究(DESY) の4 人の博士学生や若手研究者、破裂して、泡を立てるショーのいくつかをつくるのにボランティアで参加してくれた2 人のエンジニア、そして、リーダーであり、『資金係』であるフォスター氏だ。

※ 科学イベント「素粒子物理スラム」のこと。「スラム」とは得点を争う「競技」のこと。「素粒子物理スラム」で、研究者たちは「面白くてためになる素粒子物理を紹介するプレゼン能力」を競う。観客たちの拍手と歓声の大きさで勝敗が決まる。


素粒子物理ワールドニュース

KEK と共同でILC の研究開発にあたっている世界の研究所から発信された、素粒子物理学関連の話題をピックアップします。

7 月4 日
CERN Bulletin より
エネルギー測定から医学画像へ:技術移転の成功例!

 CERN のチームは、彼らがAX-PET と呼ぶ、医学画像のための新たなPET(陽電子放射断層撮影)システムを作成するために、高エネルギー物理用に開発された(粒子の)エネルギー測定法からインスピレーションを受けた。プロジェクトは、欧米の研究所の支援を受け、最初のテストでその見込みを確認し、結実した。

 PET は、物質反物質相互作用を元にする、器官の代謝活動の三次元表示を提供可能な、医学画像技術だ。そのためには最初に、対象物に放射性マーカー分子が注入される。マーカー分子が崩壊すると陽電子(電子の反粒子)を放出する。陽電子は,周囲の電子に遭遇すると、即座に消滅する。結果として生じる(2 つの光子からなる)発光は、PET 装 置で検出される。従来のPET システムでは、感度を失わずに空間分解能を改善することは不可能だった。AX-PET はこのトレードオフを回避する方法を提供し、画像の質を改善する。従来のPET の分解能が4~ 6 ミリメートルに制限されるのに対し、AX-PET はミリメートルスケールの分解能を達成することが可能だ。

英文記事: http://cdsweb.cern.ch/journal/CERNBulletin/2012/35/News%20Articles/1473667?ln=en


トピックス
KEK 一般公開、約4,600 名が来場

 9 月2 日、KEK で一般公開を実施し、約4,600 名の来場者を迎えた。ILC 関連では、先端加速器試験施設(ATF)、超伝導RF 試験設備(STF)、研究本館でのパネル展示を回った方を対象に、缶バッジなどが当たるガチャガチャを実施した。多数のご来場ありがとうございました。


トピックス
KEK キャラバンによるILC の講演、岩手と福岡で実施

 8 月23 日、岩手県北上市生涯学習センターで「リニアコライダーが開く世界~宇宙をつかまえる~」と題する講演が行われ、およそ120 名が聴講した。 講演では大森恒彦氏(KEK)が、高校の物理で習う「運動方程式」を解説。惑星、月、木から落ちるリンゴまでもがこの運動方程式で記述出来るのなら、宇宙全体も統一的に理解できるのではないかと説明した。また、物理研究を行う手段としての加速器を解説し、LHC の次の加速器として期待されるILC とそこで期待される「素粒子物理学の革命」について述べ、また ILC を中心として国際科学都市が出来る事への期待を語った。  アンケートでは、「(加速器が)ガン治療に実用されているとは初めて知りました」、「宇宙とかミクロの目にも見えないものを使ってすごーい設備で調べているのですね。ノーベル賞もらった方も何年も何年もかかって先輩から後輩へ引き継いで調べた事なんですよね。すごいと思いました」などの感想があった。

 8 月3 日には、福岡県福岡市のギルドカフェで「光速で激突?ビッグバンの再現!神の粒子『ヒッグス粒子』を解析すると言われる人類史上最大の加速器ILC の核心にせまる」が開催され、一般の方23 名が集まった。  KEK の藤本順平氏が「宇宙の謎に迫る」と題し、素粒子物理の基礎について講演。素粒子とは何か、素粒子物理学研究する装置である加速器を使って、何が分かってきたのか、まだ分からないことは何なのか、まだ分からない宇宙の謎に迫るための加速器「ILC」の概要について説明した。  講演後には、「人がこの世界をどのように理解しようとし、また多くの人の力と仕組みでその謎解きに挑んでいるかを知り、これから出てくるであろう発見を楽しみにしています」、「加速器をTV などで見て興味があったので話が聞けておもしろかったです」などの感想が寄せられた。



お知らせ
先端加速器科学技術推進シンポジウム2012in 九州 「宇宙の謎に迫る」

主催:先端加速器科学技術推進協議会/先端基礎科学次世代加速器研究会
後 援:福 岡県/佐賀県/九州経済連合会/九州大学/佐賀大学/ KEK
協 力:Asia Europe Pacific School of High Energy Physics
日時:2012 年10 月27 日(日)13:30 ~ 17:00 (13:00 開場)
場 所:アクロス福岡(福岡市中央区天神一丁目1 番1 号)
http://www.acros.or.jp/access/
地下鉄天神駅から徒歩3 分、西鉄福岡(天神)駅から徒歩10 分
参加費:無料 / 定員:200 人
※事前の参加申込みが必要です。定員になり次第締切ります。

≪プログラム≫
講 演
・「イントロダクション:加速器について」九州大学大学院 教授 川越 清以 
・"The Large Hadron Collider: Unveiling the Universe"
「LHC で宇宙の秘密を探る」CERN 所長  Rolf-Dieter Heuer (逐次通訳付)
・「国際リニアコライダー計画(ILC)実現に向けて」KEK 機構長 鈴木 厚人 
 みんなの不思議をカイケツ! Q & A

以下のURL もご覧ください。
http://aaa-sentan.org/event/simpo_1210.html

< お申込・お問合せ > 先端基礎科学次世代加速器研究会 事務局
(福岡県商工部新産業・技術振興課ILC 班内)
TEL:092-643-3449 / FAX:092-643-3436 / E-mail:shinsan@pref.fukuoka.lg.jp


SAGA わくわく祭(さい)エンス2012

 科学実験ショーやクイズ大会、事前募集制の科学競技会など、子どもから大人まで幅広い年齢層の人たちが、科学技術全般に親しみ楽しむことのできる企画が満載です。ILC を紹介する特設ブースも設置され、ポスターの展示や専門家による説明が行われます。

主催: 佐賀県
日 程:平成24年10月27日(土)と10月28日(日)ともに10時~17 時
会 場:佐賀勤労者総合福祉センター(メートプラザ佐賀)
佐賀市兵庫町大字藤木1006-1 電話0952-33-0003)
参加費:無料
〈お問合せ〉佐賀県 新産業・基礎科学課 基礎科学担当(担当 野田、宮地)
http://www.pref.saga.lg.jp/web/shigoto/_33022/_33024/_65375.html
TEL:0952-25-7129 / FAX:0952-25-7282 / E-mail: shinsangyou@pref.saga.lg.jp



大学共同利用機関シンポジウム2012 万物は流転する -誕生の謎-

 大学共同利用機関の研究成果を分かりやすく講演いたします。知の拠点群- 大学共同利用機関- が拓く科学の広大なフロンティアについてご紹介できれば幸いです。KEK からは、磯 暁 教授による講演「ヒッグス粒子の発見が物語ること」を予定しています。その他の講演者や詳細については、シンポジウムウェブサイト(http:// 万物流転.jp)をご 覧ください。皆様のご参加を心よりお待ちしております。

主催: 大学共同利用機関協議会
日 程:2012 年11 月17 日(土)12:00 ~ 17:00
会 場:東京国際フォーラム ホールB7 (JR・東京メトロ有楽町駅からすぐ)
入場料:無料(予約不要)
〈お問合せ〉大学共同利用機関協議会 広報ワーキンググループ事務局
TEL:055-981-6707 / E-mail:soumu-mail@lab.nig.ac.jp



KEK 公開講座2012 質量の起源に迫る

日 時:2012 年12 月15 日(土)13:30 ~ 16:00
場 所 :KEK 研究本館 小林ホール
対 象:中学生以上
参加費:無料 / 定員:170 名(申込者多数の場合は抽選により決定)
受付期間:2012 年11 月3 日(土)~ 11 月16 日(金) 申込方法:10 月29 日(月)公開の公開講座ウェブサイト(http://kouza.kek.jp/)をご覧ください。

《プログラム・講演》
 「ATLAS 実験:ヒッグス粒子らしき新粒子の発見とこれから」
   KEK 素粒子原子核研究所 准教授 長野 邦浩
 「ヒッグス粒子とは何か?」KEK 素粒子原子核研究所 助教 阪村 豊

〈お申込・お問合せ〉KEK 企画課
〒305-0801 茨城県つくば市大穂1-1
TEL:029-864-5113 / FAX:029-864-5195 / Email:kouza@kek.jp



先端加速器科学技術推進シンポジウム2013in 信州(仮称)

日 時:2013 年1 月26 日(土)13:30 ~ 17:00
場 所:長野県松本文化会館(松本市水汲69-2)http://www.matsubun.jp/
講演者:信州大学 竹下 徹教授、放射線医学総合研究所 辻井 博彦フェロー、
    KEK 鈴木 厚人機構長

 お申込方法やプログラムの詳細等については、先端加速器科学技術推進協議 会ホームページ(http://aaa-sentan.org/)をご覧下さい。



加速器図鑑
電子銃

広島大学、原子力研究開発機構、名古屋大学、KEK の共同開発による最新型の高性能な電子銃。分割型セラミックと呼ばれている部分が絶縁体。この絶縁体をはさんで陰極(カソード電極)と陽極(アノード電極)との間に500kV という高電圧がかけられる。電子銃の全長は約1m。全長31km のILC 全体から見ればとても小さな部品だが、これがなければ始まらない。

 電子加速器の始まりは電子銃である*1 。電子銃は電子ビームを出すための源となる装置である。電子を打ち出すという意味から銃と呼ばれている。電子ビームをどうやって打ち出すのだろう。金属や半導体など物質中から電子を取り出すのである*2。すべての物質は原子核と電子とで出来ているので、その中からまとまった量の電子を取り出して一方向に向かって加速してやればビームとなる。つまり電子銃は小型の加速器でもある。

 電子の取り出し方にはいくつかの方法があるが、ここではILC で使われる光電効果を使った方法について解説する。光電効果とは、金属などの物質に光を当てると光からエネルギーをもらった電子が物質中にとどまっていられなくなって飛び出してくる現象である。光電効果という現象の理解が、量子力学が形作られる過程で大きな役割を果たした。1905 年にアインシュタインは、 光は波としての性質を持つと共に、粒(量子)としての性質もあわせ持つという光量子仮説を提唱してこの現象を理論的に説明した。アインシュタインはこの業績で 1921年にノーベル物理学賞を受賞している。ILC の場合は電子銃の中の陰極と呼ばれる部分にレーザー光を照射し毎秒約130 兆個もの電子を取り出す。こんなにたくさん取り出しちゃって陰極の物質はどうなっちゃうのか?どんどんプラスになるのか?大丈夫、陰極との名が示すように、ここは電源のマイナス側につながっていて、そこから電流として電子がドンドン補給される。取り出された電子は高い電圧で加速される。例えば図の電子銃では500 キロボルト(kV)という高電圧が陰極と陽極の間にかかっていて、この高電圧によって電子はビームとして一方向に打ち出される。

 話は変わるが今でも一家に一台は電子銃がある。え!我が家にはそんなものは無いよ、と言う人は多いと思うが、テレビや電子レンジの無い家庭は少ないと思う。今のテレビはすっかり液晶ディスプレーになってしまったが、一昔前はテレビにはブラウン管という大型の真空管が使われていた。これは電子銃から電子ビームを打ち出し、それをスクリーンに当てて光らせて絵を表示する装置である。電子レンジにはやはり小型のマグネトロンと呼ばれる電子銃が内蔵されていて、それが発生する強力な電磁波で水分を含む食品を加熱する。電子銃は、他にも電子顕微鏡、電子ビーム溶接、通信放送電波発生、ガン治療など、研究や産業、医療などの様々な分野で大活躍している。加速器の応用範囲は極めて広い。

*1 LHC や大強度陽子加速器施設(J-PARC)などの陽子の加速器ではもちろん電子銃は使わない。まったく別の仕掛けで陽子を発生させる。
*2 ILC では電子と陽電子を衝突させる。では陽電子ビームはどのように発生させるのか。陽電子は物質の中には無いので取り出すわけにはいかない。これについてはILC 通信 55 号の巻頭記事「陽電子の作り方」を参照。


編集部より

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