J-PARCハドロン実験施設における事故について (KEK 機構長 鈴木厚人)



ILC をめぐる最近の動き

ILC通信 69号pdf

4 月30 日、米ワシントンDC で開催された、政産官学連携・日米先端科学シンポジウムの参加者ら

 4 月30 日、米国ワシントンDC 市内のホテルに、日米両国の政産官学の代表が集まり「日米先端科学技術シンポジウム」が開催された。日本からは、河村建夫議員、塩谷立議員、増田寛也日本創成会議座長が参加し、講演やパネル討論を行ったほか、同日に開催された第12 回日米合同高級委員会に出席していた下村博文文部科学大臣も会場に駆けつけ、来賓挨拶を行った。

4 月30 日のシンポジウムで
講演する、河村建夫 リニア
コライダー国際研究所
建設推進超党派
議員連盟(議連)会長

 リニアコライダー活動を推進する国際組織「リニアコライダー・コラボレーション(LCC)」のILC 担当ディレクターのマイク・ハリソン氏による開会挨拶の後、河村氏が基調講演を行った。「今日は、リニアコライダー国際研究所建設推進超党派議員連盟(議連)の会長として、日本のメッセージを届けに来た」と河村氏。同議連は、平成20 年設立。現在150 名を超える国会議員の参加があり、ILC の推進に向けて様々な活動が行われている。高エネルギー加速器研究機構(KEK)にも、多くの議員の方が視察に訪れている。河村氏は、ILC を、日本が国を開くという観点で「これだけ魅力的な計画はない」と評価。「新たな日米欧を中核とする多国間パートナーシップをILC 計画をモデルに立ち上げたい」と語った。

 続いて講演を行った米エネルギー省(DOE)のダニエル・B・ポネマン長官代行は大型科学プロジェクトについて「財務的、技術的資源を要するもので、一国では実現できないが、大きな結果をもたらす」としたうえで、米国のILC 計画への参加については「わが国の予算の現実を慎重に考慮しなければならないが、ILC計画における日本の国際協力を心から歓迎する」と述べた。

下村博文 文部科学大臣

 下村文科大臣が参加した、同日午前中に行われた日米合同高級委員会では、イノベーションのための産学連携の有効性が再確認され、様々なプログラムを通じた両国の協力の可能性を追求することが合意されたことから、下村氏は「両国の産業界を巻き込み議論する本シンポジウムは、時期を得たものである」と述べ、ILC については「国際協力の下で各国が役割を分担しなから進めることが肝要である」との見方を示し、また「日本では国内候補地の評価が科学的見地から行われている」ことを紹介した。

増田寛也 日本創成会議座長

 増田氏は、ILC 計画に関する日本国内の現状を報告するとともに、今必要とされているものは、国際社会からの「人類の未来のためにILC が必要であるという強いメッセージ」だとし、「皆さんの声が日本政府、国民さらには世界を動かす契機になる。日本と一緒にILC を進めたいというメッセージを是非頂きたい」と呼びかけた。



4 月30 日のシンポジムのパネルディスカッションの口火を切る、塩谷立議連幹事長(左から4 人目)

後半のパネルディスカッションには、塩谷議員、増田氏に加え、鈴木厚人KEK 機構長、ジム・シーグリストDOE 物理学局ディレクター、ニック・サミオス理研BNL 研究センター名誉ディレクター、LCC の米国地域ディレクターのハリー・ウィーツ氏が参加した。

パネルディスカッションの参加者は、これまでの科学技術や加速器科学に置ける日米協力について振り返り、協力関係の継続と発展の重要性が共有された。塩谷氏は「日米の専門家がこれだけ多く集まって議論を行うことが出来て有意義であり、また同日にアンブレラ協定での新たな合意が出来るなど、画期的な前進があった。政治の立場から、連携のルールづくりなどに取り組みたい」との決意を表明した。日米の30 年にわたる科学技術における協力関係は、この日、新たにスタートを切ったと言えるだろう。

3 月27 日、安倍晋三 内閣総理大臣を表敬訪問する、リニア
コライダー・コラボレーション(LCC)ディレクター、
リン・エバンス氏。訪問には、小柴昌俊氏(2002 年ノーベル
物理学賞受賞者)、河村建夫氏(議連会長)、塩谷立氏(議連
幹事長)、村山斉氏(LCC 副ディレクター)、鈴木厚人氏
(KEK 機構長)、山下了氏(ILC 戦略会議議長)が同席した。
画像:首相官邸

 このシンポジウムに先立ち、3 月27 日には、LCC の代表、リン・エバンス氏が、小柴昌俊氏(2002 年ノーベル物理学賞受賞者)、河村建夫氏(議連会長)、塩谷立氏(議連幹事長)、村山斉氏(LCC副ディレクター)、鈴木厚人氏(KEK 機構長)、山下了氏(ILC 戦略会議議長)と安倍晋三内閣総理大臣を表敬。加速器科学における日本の貢献や、欧・米など世界でILC 日本誘致への期待感が高まっている状況等を説明した。安倍総理は、ILC を「人類全体にとっての大きな意義のある計画」であると評価し「国際計画であることを鑑み、慎重にその動向を見ながら検討していく」と述べた。

川崎稔議員(左)と主濱了議員(右)は、
3 月4 日に高エネルギー加速器研究機構
(KEK)を視察し、KEK の研究者、藤本
順平氏(中央)から説明を受けた。
3 月18 日、3 名の元大臣を含む議連の10 人のメンバーがKEK を視察した。
左から:福岡資麿議員、藤井基之議員、斉藤鉄夫議員、黄川田仁史議員、
藤谷光信議員、保利耕輔議員、小坂憲次議員、井上貴博議員、今津寛議員、
桜井宏議員。KEK の研究者、照沼信浩氏(右)がATF を案内した。

 国際協力でのILC 実現にむけた取組みは、着実に前進しているということができるだろう。

















ILC NewsLine ダイジェスト

ILC とCLIC 研究者グループが隔週で発行しているニュースレタ<ー「LC NewsLine」に掲載された記事から、ILC 通信編集部セレクトのおすすめ記事を要約版でお届けします。元記事は、ウェブサイトでご覧頂けます。
英語:http://newsline.linearcollider.org/
日本語訳:http://ilchighlights.typepad.com/japan/

2013 年3 月21 日号  リニアコライダーの物理・測定器グループの共同戦線を結成する山本 均 LCC 物理測定器担当ディレクター

 LCC は、2013 年2 月にカナダのバンクーバーで開催されたリニアコライダー国際推進委員会で公式にスタートし、新しい組織はゆっくりと形になりつつある。私は、 新組織の物理・測定器部門の担当ディレクターに任命された。LCC ディレクターのリン・エバンス氏は、このポストに割り当てられる仕事が最も難しいものであると思 うと私たちに話した。

 では、物理・測定器副ディレクターの使命とは何なのか?国際リニアコライダー運営委員会により定められたさしあたっての使命は、担当ディレクターは次世代リニアコライダーの物理学上の意義の形成に焦点を当てること、最先端の測定器技術の研究開発を調整すること、両加速器技術(すなわちCLIC とILC)のために承認された測定器コンセプトの開発を推進すること、とある。そして最終的には、担当ディレクターは、いずれの加速器技術にも適切な最先端測定器を開発する世界的な活動を推進し、実際にLC プロジェクトが承認される時にむけて、共同研究グループを結成して測定器の建設をするための地ならしをする、ということだ。



2013 年4 月4 日号 
ILC 技術のスピンオフ

超伝導加速器(右側)とその出力電子ビームを細く絞る
ビームラインと4 枚鏡共振器とを組み合わせて
構成されたX 線生成装置(左側)
のイラスト図。

 KEK の超伝導リニアック試験施設(STF)で実施されている、小型高輝度光子ビーム発生装置の逆コンプトン散乱によるX 線生成実験で、3 月15 日、逆コンプトン散乱によるX 線と確認できる信号を捉える事に成功した。この技術を超伝導加速器に応用し、X 線の生成に成功したのは世界初となる。

 小型高輝度光子ビーム発生装置プロジェクトは、文部科学省量子ビーム基盤技術開発プログラムの委託研究「超伝導加速による次世代小型高輝度光子ビーム源の開発」で、5 年間の計画。電子ビームとレーザーパルスの衝突による高輝度X 線の発生と、医療、生命科学、IT、ナノテクなど、幅広い分野におけるその応用を目指すもの。

 「量子ビーム」とは、中性子や光子、 イオン等の粒子のビームのこと。「量子力学は、私たちの生活に大きな影響を与えています」と語るのは、同プロジェクトのプロジェクトマネジャーを務めるKEK の浦川順治氏。例えば、量子力学なしにはトランジスターは存在せず、よって、パソコンも存在し得ない。また、もしレーザーがなければ、DVD やブルーレイディスクも生まれなかった。「しかし、私たちの研究は、基礎科学の研究を目的に行われて来たため、研究成果が直接的に応用につながることはなかったのです。このプログラムは、それを変革するものです」(浦川氏)。

 光子が電子に衝突して電子にエネルギーを与える現象を「コンプトン散乱」と呼ぶ。一方で、相対論的な速度で運動している電子と赤外線や可視光の波長の光子が衝突したときは、 電子のエネルギーが光子のエネルギーよりはるかに大きいため、電子が光子にエネルギーを与える。この現象は「逆コンプトン散乱」。逆コンプトン散乱は高エネルギーX 線やガンマ線を発生している様々な天文現象においても引き起こされている。同プログラムでは、超伝導加速によって加速した電子ビームを、4枚鏡光共振器に蓄積されたレーザーパルスと正面衝突させることにより、逆コンプトン散乱を起こし、輝度の高いX 線を生成する。

 逆コンプトン散乱は、高エネルギーX 線生成の有望なアプローチであると広く認識されており、ポストゲノム研究やナノテク、原子レベルの構造解析等に役立つことが期待されている。これらの分野で研究が進展することは、産業、医療、セキュリティ等多くの分野での幅広い応用につながる。その実用的な応用の鍵となるのは、X 線の高輝度化。その高輝度化を実現する技術が、超伝導高周波(SCRF)加速技術だ。



素粒子物理ワールドニュース

KEK と共同でILC の研究開発にあたっている世界の研究所から発信された、素粒子物理学関連の話題をピックアップします。

2013 年4 月3 日
CERN プレスリリースより AMS 実験、宇宙空間での反物質の過剰を測定

 4 月3 日、アルファ磁気スペクトロメータ(AMS)の運転を行う国際チームは、暗黒物質を知る手がかりとなる観測データを得たと発表。AMS の研究代表者のサミュエル・ティン教授は、欧州合同原子核研究機関(CERN)で開かれたセミナーで、成果は米科学誌フィジカル・レビュー・レターズに掲載されると報告した。

英文記事:http://press.web.cern.ch/press-releases/2013/04/amsexperiment- measures-antimatter-excess-space

2013 年3 月20 日
ESA プレスリリースより プランク天文衛星が明かすより完全な宇宙の姿

 3 月20 日、欧州宇宙機関(ESA)のプランク天文衛星が宇宙背景放射の最も詳細な姿を発表した。これは宇宙が誕生してから38 万年後の古い宇宙の姿を、プランク天文衛星が15.5 ヶ月かけて取得したデータに基づく。その結果、宇宙の年齢が138.2 億歳であることが分かった。さらに、物質の量は4.9%、暗黒物質の量は26.8%であると発表された。

英文記事:http://www.esa.int/For_Media/Press_Releases/Planck_reveals_an_almost_perfect_Universe

2013 年3 月14 日
CERN プレスリリースより 新しい結果は、CERN で発見された粒子がヒッグス粒子であることを示唆

 3 月14 日、CERN の大型ハドロンコライダー(LHC)のATLAS とCMS 両実験は、本日モリオン国際会議で新しい暫定結果を発表し、昨年発見された新粒子の性質を更にはっきりさせた。7月の発見報告時から比べて約2.5 倍の量のデータをもとに解析した結果、この新粒子は、ますますヒッグス粒子らしさをましてきた。(ヒッグス粒子は素粒子の質量を与える機構と関連した粒子である。) しかしながら、これが素粒子物理学の標準理論で予言するヒッグス粒子なのか、それとも標準理論を超えたいくつかの理論で予言される複数のヒッグス粒子的な新粒子の一番軽いものであるかなどはまだ分からない。このような問に答えるにはまだ時間が必要だ。

英文記事:http://press.web.cern.ch/press-releases/2013/03/ newresults-indicate-particle-discovered-cern-higgs-boson


トピックス

経済同友会、「国際リニアコライダー(ILC)日本誘致に向けた政治のリーダーシップを」を発表

 4月2日、経済同友会 提言・意見書・報告書2013 で「国際リニアコライダー(ILC)日本誘致に向けた政治のリーダーシップを」が発表された。提言・意見書・報告書2013 の本文はこちらから。
http://www.doyukai.or.jp/policyproposals/articles/2013/ pdf/130402a.pdf

トピックス

東北と新潟で先端加速器シンポジウム開催

 4 月26 日、江陽グランドホテル(宮城県仙台市)にて、東北ILC 推進協議会、先端加速器科学技術推進協議会(AAA) の共同主催、KEK の後援によ り、「先端加速器科学 技術推進シンポジウ ム2013 in 東北~宇 宙の謎に挑む 最新科 学と最先端技術の挑 戦~」が開催され、約 350 名が参加した。仙 台にはILC の測定器開発で大きな役割を果たしている大学の一つであ る東北大学がある

 シンポジウムは、鈴木厚人KEK 機構長による「ビッグバンを再現す る究極の加速器 国際リニアコライダー」と題する講演から始まり、日 本創成会議の増田寛也座長の「ILC の実現による国際的な地方都市の 創造」、辻井博彦氏(放射線医学総合研究所フェロー)の「ここが違う  重粒子線がん治療」、山下了氏(AAA 大型プロジェクト部会長)の「ILC の実現に向けて 最新のトピックス」についての講演が行われた。

  5 月11 日には、 新潟大学五十嵐キャ ンパス中央図書館ラ イブラリーホール(新 潟県新潟市)におい て、「先端加速器科学 技術推進シンポジウ ム2013 in 新潟~宇 宙の謎に迫る先端加 速器国際リニアコラ イダーとはやぶさの 挑戦~」(新潟大学、AAA の共同主催、KEK の後援)が実施され、 若い世代を中心に約200 名の参加があった。

 シンポジウムは、谷本盛光氏(新潟大学自然科学系長 自然科学系(理 学部)教授)による「素粒子の世界を拓く新潟大学の研究」と題する講 演からスタート。鈴木厚人KEK 機構長の「ビッグバンを再現する究極 の加速器 国際リニアコライダー」、川口 淳一郎氏(宇宙航空研究開発 機構 シニアフェロー、宇宙科学研究所 宇宙飛翔工学研究系 教授)の 「『はやぶさ』が挑んだ人類初の往復の宇宙飛行、その7 年間の歩み」に ついての講演を実施した。

 後半のパネルディスカッションでは、講演者が会場からの「宇宙に興 味をもったきっかけは」、「研究者になるにはどんな勉強をしたらよいの か」などといった質問にこたえた。


お知らせ
ILC のマンガ、ウェブで公開中

 「世界でただ1 つの未来の加速器」を楽しいマンガで紹介する、「宇 宙をつくる加速器『国際リニアコライダー』がやってくる!?」が完成し ました。

 国際リニアコライダー(ILC)と は何か。ILC で何がわかるのか。 ILC のアレコレについて、マンガ でわかりやすく紹介します。ILC のしくみの紹介や加速器、超伝導、 ナノビーム、素粒子とヒッグス粒 子、標準理論など、ILC に関係す る用語についての解説もあります。

 マンガはウェブページ http://ilc-tsushin.kek.jp/ilc-comic_web/index.html よりご覧いただけます。

お知らせ
KEK 一般公開

 2013 年の一般公開は9 月8 日(日)に開催します。詳細については決まり次第、KEK 一般公開ウェブページ http://www.kek.jp/ja/ PublicRelations/Events/Openhouse/ に掲載される予定です。

お知らせ
KEK キャラバン~お届けします、科学に夢中~

 KEK では、学校、各種団体等へ研究者や職員を講師として派遣する プロジェクト「KEK キャラバン」を実施しております。本キャラバン は、いわゆる出前授業で、加速器を用いた素粒子や物質・生命などの研 究や、その研究を支える仕事の紹介を行っています。
 ILC についての講演・サイエンスカフェ等も実施しております。ま ずは下記までお問合せ下さい。

<お問合せ> KEK 広報室普及グループKEK キャラバン係
TEL:029-879-6247 FAX:029-879-6246
WEB:http://caravan.kek.jp E-mail:caravan@ml.post.kek.jp

             

編集部より

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